緊急事態宣言の基礎知識について

 組合員の皆さんお疲れ様です。

 このホームページでも度々触れていますが、新型コロナウイルスが猛威を振るっています。その影響により昨日、非常事態宣言が出されました。

 組合員の皆さんにおいては、生活・業務にも様々な影響が出ていると思います。 今回の非常事態宣言は7都府県が対象ですが、今後の動向次第では他の地域も対象になる可能性もあります。そこでまずは非常事態宣言について、組合員さんが知っておくべき項目をご案内します

 新型コロナウイルスの感染が都市部で急速に拡大している事態を受けて、安倍総理大臣は、政府の対策本部で、東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を行いました。宣言の効力は来月6日までで、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡が対象となります。

 午後5時半すぎから総理大臣官邸で開かれた政府の対策本部で安倍総理大臣は「諮問委員会において、新型コロナウイルス感染症は肺炎など重篤な症例の発症頻度が相当程度高く、国民の生命および健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、感染経路が特定できない症例が多数に上り急速な増加が確認されている。医療提供体制もひっ迫してきているとされた」と述べました。

対象は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡

そのうえで、「全国的かつ急速なまん延により国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断し、特別措置法に基づき、『緊急事態宣言』を発出する」と述べ、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、「緊急事態宣言」を行いました。宣言はこのあと官報で公示され、7日から来月6日まで効力が生じることになります。

そして安倍総理大臣は、感染拡大の状況などから緊急事態宣言の措置を実施する必要がなくなった時は速やかに宣言を解除する方針を示しました。

Q.「緊急事態宣言」とは?

新型インフルエンザ等対策特別措置法の概要

新型インフルエンザ等対策特別措置法の概要

内閣官房新型インフルエンザ等対策室

内閣総理大臣は、新型インフルエンザなど国民の大部分が免疫を獲得していない感染症が発生した場合、緊急の措置を講ずるために「緊急事態」を宣言することができる。これを「新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下、緊急事態宣言)」という。

根拠となる法律は「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」だ。もともとは新型インフルエンザなど新感染症の対応策を定めるために2012年5月に公布されたが、この3月に新型コロナウイルスにも適用できるように改正された(「新型コロナウイルス特措法」)。

Q.「緊急事態宣言」で何ができるの?

内閣総理大臣が「緊急事態」を宣言すると、対象地域の都道府県知事が法律に基づき、感染防止に必要な協力を要請・指示ができる。実際の「要請」や「指示」を発するのは、内閣総理大臣ではなく都道府県知事となる。

内閣総理大臣が緊急事態を宣言するためには、特措法32条に基づき、以下の条件を満たす必要がある。

1)国内で発生した新型インフルエンザ等が、以下の2要件を満たすこと。

  • 「国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合」
  • 「全国的かつ急速なまん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合」

2)事前に感染症に関する専門家ら「諮問委員会」にはかり、その意見を踏まえて緊急措置を実施すべき期間(2年を超えない期間。ただし1年延長可能)、区域、緊急事態の概要(患者が確認された地域、患者数等、ウイルスの病原性、症状、感染拡大を防ぐために必要な情報など)を定める。

3)緊急事態宣言の発令を国会に報告し、公示しなければならない。

Q.「緊急事態宣言」は「ロックダウン」と同じ?

日本では「緊急事態宣言」とともに「ロックダウン(都市封鎖)」という強い言葉が独り歩きしているが、ヨーロッパなどで見られる戒厳令のような「ロックダウン」とは異なる。

内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、以下のような見解を示している。

欧米におけるロックダウンのように強制的に罰則を伴う都市の閉鎖は生じません。特措法に基づき、都道府県知事により外出自粛要請、施設の使用制限に係る要請・指示・公表等ができるようになります。

そもそも、日本の現行法では「ロックダウン」の定義について定められていない。日本の「緊急事態宣言」には罰則を伴う外出禁止命令や強制力をもって交通機関をストップさせるような都市封鎖を実施できる規定はない。

イギリスのの行動制限等の現状について(4月1日現在)

イギリスの行動制限等の現状について(4月1日現在)

厚生労働省

一方、諸外国をみると、例えばイギリスフランスでは買い出しや散歩、医療上の理由、必要不可欠な出勤以外の外出が原則禁止され、ドイツでも連邦政府が外出自粛などのガイドラインを発表。ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州など一部の州では違反者に罰金が課せられる

イタリアでは鉄道の運行停止、移動制限や必要不可欠な部門以外の生産活動を停止しており、こうした措置を4月13日まで実施する。公共の場所での2人以上の集会を禁止し、違反者には罰則を設ける州もある。

アメリカでは連邦政府が3月13日に非常事態宣言を発出。10人以上の会合やレストラン等での食事、不要不急の旅行を避ける等の大統領ガイドラインが出された。ニューヨーク州では一部を除き出勤禁止となった

ただ、こうした国々では行動制限が課される一方、ロックダウンに伴う損失の補償、給付、休業補償などの公的支援などが施されている。

Q.「緊急事態宣言」で、お店はどうなるの?

緊急事態宣言が出ても、買い物が制限されることはない。

緊急事態宣言が出ても、買い物が制限されることはない。

病院、薬局、コンビニやスーパーマーケット、食料品店など生活必需品を販売する施設が強制的に閉鎖されることはない。緊急事態宣言が出された以降も買い物はできる。

JR・私鉄、バス、タクシーなどの公共交通機関の運行を制限するものではない。電気、ガス、水道、電話、通信などのライフラインは平常通り維持され、銀行もメガバンクは全店で営業を続ける方針だ。

緊急事態宣言が出たからといって、対象地域から別の地域に移動すれば感染を広げたり、移動先の医療体制を逼迫させたりするおそれがある。冷静な対応が必要だ。

Q.「緊急事態宣言」の対象となった自治体で外出はできるの?

都道府県知事は、生活維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう「要請」できる。

医療機関への通院、生活必需品の買い物、必要不可欠な職場への出勤、健康維持のための散歩やジョギングなど「生活の維持に必要な場合」には外出できる。ただ、「要請」に応じなかった場合の罰則はない。

特措法45条:特定都道府県知事は(中略)当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅またはこれに相当する場所から外出しないこと(中略)を要請することができる。

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Q.使えなくなる可能性がある施設は?

「夜の街」への自粛要請はどうなるのか。

「夜の街」への自粛要請はどうなるのか。

都道府県知事は学校、デイサービスセンターなどの社会福祉施設、映画館や劇場など娯楽施設、一定規模以上の遊技場、百貨店、美術館、キャバレー、ナイトクラブ、ボーリング場などの遊興施設、理髪店、学習塾など「多数の者が利用する施設」の使用制限を「要請」することができる。ただし「要請」に応じなかった場合の罰則はない。

緊急事態宣言が発出された場合も、百貨店やスーパーマーケットの中の食品・薬など生活必需品の売り場は営業できる。

特措法45条の2:特定都道府県知事は(中略)学校、社会福祉施設(通所または短期間の入所により利用されるものに限る)、興行場、その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止または催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

Q.イベントはどうなるの?

特措法45条の2に基づき、都道府県知事はイベント開催の中止などを「要請」することができる。

また、正当な理由がないのに施設管理者やイベント主催者が「要請」に応じないときは、都道府県知事が必要があると認めるときに限り、中止を「指示」することができる。「要請」や「指示」をした場合、都道府県知事はその旨を公表しなければならない。

ただ、この場合「要請」「指示」に応じなかった場合の罰則はない。

特措法45条の3:施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は(中略)特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

Q.学校や保育園はどうなるの?

特措法45条の2に基づき、都道府県立の学校は知事の判断で休校できる。私立学校や市町村立の小・中学校、保育園や学童保育などは知事が休校・休業を「要請」することができる。

「要請」に応じない場合は、休業を「指示」できるが応じなかった場合の罰則はない。

Q.他にどんなことができるの?

臨時の医療施設を開設するために土地・建物を使用や医薬品・食品などの物資の売渡しを要請できる。

  • 特措法49条に基づき、都道府県知事は臨時の医療施設を開設するために土地・建物を使用できる。所有者の同意が得られない場合は強制的に「収用」できる。
  • 特措法55条に基づき、企業などに医薬品や食品など物資の売り渡しを「要請」できる。所有者の同意が得られない場合は強制的に「収用」できる。また、物資の保管を「命令」することができる。

Q.「要請」「指示」に応じなかった場合、罰則はないの?

特措法の中で罰則が定められているのは、以下の2つだけだ。

命令に従わず物資を隠したり、廃棄、搬出などをした場合。

特措法76条 第55条第3項の規定による特定都道府県知事の命令又は同条第4項の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長の命令に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。

物資の保管場所の立ち入り検査を拒否したり、妨害、虚偽報告などをした場合

特措法77条 第72条第1項若しくは第2項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は30万円以下の罰金に処する。

Q.「緊急事態宣言」で強制的な休業はあり得るの?収入は補償されるの?

緊急事態宣言による「要請」「指示」を受けて企業が休業したり、イベントが中止になった場合でも、その補償について定められてはいない。

緊急事態宣言による「要請」「指示」を受けて企業が休業したり、イベントが中止になった場合でも、その補償について定められてはいない。

特措法では、民間企業の経済活動を強制的に止める措置についての直接的な規定はない。

緊急事態宣言による「要請」「指示」を受けて企業が休業したり、イベントが中止になった場合の補償についても定められていない。

営業停止を求められた事業者などへの損失補てんについて、安倍首相は7日の衆院議院運営委員会で「現実的でない」と否定。飲食店に物品を納入する業者と飲食店を例にあげて「自粛養成している人(飲食店)に限って補てんするのはバランスを欠く」との見解を述べた。

労働者の場合はどうか。労働基準法26条では会社が労働者に仕事を休ませる措置をとるなど、会社の責任・判断で労働者を休ませる場合は、休業期間中に休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならない。ただ、緊急事態宣言に基づく休業が「使用者の責任」になるかどうか不透明だという声がある。

労働者の権利擁護に取り組む弁護士団体「日本労働弁護団」は、「国や地方自治体から自粛の要請を受けたということを理由にしたとしても、 会社が労働者に労務を提供させることが可能であるのに、自らの判断によって休みにする場合には『使用者の責めに帰すべき事由』(民法条項)があるものと考えられます」指摘する

その上で「労働者としては、会社に対して、就労させるよう求め、賃金全額の支払いを求めましょう」と呼びかけている。